ジンジャー・エールの生姜率

勢いで始めてしまったブログ。旅行や小説や音楽を語るともっぱらの噂。

日記:神宮球場で六大学野球観戦

信濃町駅総武線の電車が入線していく。階段から随分離れた場所に停車して、慣れてないから、という答えがもたらしたのは歩く面倒くささか、この駅にあまり用事はない人間ですよというアピールか。ともあれ、このときはまだ少し億劫な気持ちがあった。

 

神宮球場に野球を観に行こう、ちょうど大学野球の時期みたいだし、と思ったのは先週のことだった。

本当はプロ野球を観に行き、(ファンでもないのに)しれっとスワローズ側の応援席に紛れ込んで傘を振る応援をしたいな……と思ってからもう何年も経っていた。東京に来た頃から思っていたのに。他の楽しみを優先したり、感染症を恐れたりして結局行けずじまいになっていた。

さすがにそろそろ、と3月のオープン戦の頃に予定を組もうとしたこともあったが、どうにも体調が追いつかない。ようやく予定と体調と、天候も含めてバッチリ合ったのが今日だった。

六大学野球の選手は全然分からないが、神宮と言えば大学野球の聖地である。それはそれで観てみたいと思ってはいた。

 

とはいえ、だ。

大学野球の観戦の雰囲気も分からないという尻込みが少し。某世界大運動会2020(2021)があった競技場の横を通るというゲンナリ感が割と。都合により信濃町駅から行くことにしたのだが、そこは某大手新興宗教の本拠地だというのにもピリッとしてしまう。改札辺りでスポーツバッグをかけた普通の高校生女子2人組を見て、いまこの駅にいるのは場違いじゃないとようやく思えた。

 

東京の、中枢としての部分に疲れきっている。2021年(2020)の際のゴタゴタ辺りを発端として、気ままに生きていた私でもこれまで周到に隠されていた様々な「格差」を顕著に感じるようになった。特に、政治機能の集まる中心部に行くとき、胸の中に嫌な締め付けを感じてしまう。さらには世間を騒がせる「政治と宗教」の問題……要するにこの場所はあまり今の私に合っていない。

駅から坂を下っていく着物姿の女性を2人ほど見かけた。信濃町駅から神宮外苑方面に向かうのは何度目かだが、過去にも身なりの良さそうな方々が、近くにある謎の大きな会館に吸い込まれていくのを見たことがある。同じ東京都内に暮らしていても、ただの庶民には一切見えない世界が存在する。……まあホンモノのお金持ちは総武線なんて乗らずに車で乗りつけるのだろうけど。

 

歩道橋を渡り、いつだったか一服したことのある日高屋があり、その横の通路を抜けた辺りでようやく心が少し落ち着いてきた。青々とした木々に囲まれ、人々は自由に時を過ごし、巨大で優美な聖徳記念絵画館が鎮座する。

向こうに2020(2021)会場の構造物が見えて「うわー」とは思うけれど、とりあえずもう必要以上に心は乱されなかった。いやそもそも実物としては「嵐が紅白で歌っていた場所」という記憶しかほとんど無いことにも気付いた。まあいいや。というか本当に今後どうするんでしょうねあの巨大な置物……。

 

球場方面へ少しショートカットできる、グラウンド脇の道へ。グラウンドではリトルリーグか何かの試合をやっていて、バッティングセンターからは快音が聞こえて、いつの間にか「つば九郎ハウ巣」なるスポット……巣ポットもできていた。最初は素通りしかけたけど、せっかくだからと中を覗きました。たのしかったです。

 

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ここを抜ければ、もう目の前には神宮球場

もう試合は始まっていて、少しずつ応援団の音楽が聞こえてくる。途中入場ってすんなりできるのかな?日曜日だし満席とかないかな?と本当に無知でびくびくしつつ、外野席のチケットカウンターに行くと拍子抜けするほどすんなり購入できました。

 

飲み物だけ調達していざスタンドへ。

第一印象は狭い!近い!青い!だった。

 

神宮球場プロ野球の一軍戦使用球場でも屈指の狭さ、というのは子供の頃から知っていたが、やっぱり自分の目で見てみるものだなあと思った。その分、外野席のシートのなだらかさと相まりグラウンドまでの距離がとても近く感じられる。外野手のやり取りもくっきり見えて、この臨場感は素敵だなと思った。

そして球場のカラーはブルー、快晴の青空、白熱する内野席両サイドの応援団。攻撃側にも守備側にも同じテンションでエールを送る、その若い青春エネルギーに圧倒された。

 

ちなみに席は程よく空いていて、バックスクリーン下に陣取ったらライト方面が一切見えないという神宮初心者ムーブをかましてしまった。ライト方面に際どい当たりは一度も飛ばなかったのでセーフです(?)

 

観戦したのは慶應-法政というカードで、法政が初回に2点を取っていた模様だが、以降は両チームゼロ行進が続いていた。

ちょうど見始めたタイミングは慶應の攻撃で、法政のピッチャーが投じた球に「あーいいボール投げるなー」と電光掲示板を見たら151km/hでビビりました。この日は最速154km/hだったかな?暴れ馬のようなフォームからビシビシ快速球を投げ込んでいく。

一方慶應側のピッチャーは、球速こそそれなりなものの、緩急を上手く活かしてピンチを作らない。守備陣の体つきなんかも含めて、もう大学生のこのレベルになるとプロとそこまで変わらないよな、と高校野球(=普段見慣れている学生野球)との違いを感じていた。

 

ただプロと違うのは試合のテンポの良さだったり(これはイニング間の演出も無いから当然として)、バッターボックスに入る前のエネルギッシュなルーティンだったり、何より応援席だったり。

一塁側、法政のチアは色とりどりの衣装とポンポン。三塁側、慶應のチアは白+青がメインのシンプルな衣装。それはとても対照的で、だけどどちらもよく統率されたダンス。お前女の尻ばっかり追いやがって!って(それもあるけど)違うんです、演出として人間の身体の動きとしての完成度に感銘を受けていました(……こっちの方がむしろHENTAIじみているのはなんでだろう)。

もちろんチアだけでなく。黒い学ラン?を着た応援団長のキビッ!キビッ!とした激しい動きよ!あゝバンカラバンカラ大学生だ!こういうの好き!

もちろんブラスも大活躍。あっこの曲「DASH慶應」だったかな!?本家だ!!とか(違ってたらすみません)。

そういう意味では外野席の牧歌感も特別で。内野席は学生やOBOGらしき方々の熱狂で包まれる一方、外野席は観客それぞれに贔屓はあるのだろうけど、終始ゆったりと学生達のプレーを楽しんでいる様子で。どちらサイドでもない私もおかげで全く疎外感なく、球場の一員でいられました。

 

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応援席を眺めたり、球場の広告を眺めたり、Twitterの文章を打ってたり、そういうタイミングばかりでなぜかちょうどヒットが出る不運(?)も繰り返しつつ、目の前に慶應の逆転ホームランが飛び込んできたり、最後の法政の粘りに息を飲んだり、すっかり楽しんでいたら試合が終わっていた感じ。

最後に互いの応援団が校歌と共に自軍にも相手にもエールを送るという粋な演出もあり、いいねえ……いいねえ……と涙腺に来そうになりました。

 

3-2のナイスゲームを見届けたら13時過ぎ。ついでに14時からのポケモンGOのレイド開始待ちで第二試合も1イニングだけ見届けて(明大-東大、これまた色々とチームの違いを感じて面白かったです)、球場を後にした。

最後は話題のイチョウ並木の下を通り、いつかの秋にも来たなあとセンチメンタルな気持ちになるかと思ったら集っている外車好きが鳴らすエンジン爆音で渋い顔になったりしつつ、ともあれもうこの景色も見ることはないのかもな、と思いながら銀座線の駅へと向かった。

 

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慌てるように神宮に来たのはそう、実は来月には東京を離れることになったからだ。

詳細は伏せるものの、会社は変わらず地元関西の支店に移ることになった。

そういう形だから東京にはまだまだ来ることはあるだろうけど、ふらっと訪れる日常の場所ではなくなる。最近は「やり残し」を回収する日々で、この野球観戦もそうだし、この日も電車の乗り潰しを実行していた。

 

それにしてもなあ、大学野球もっと早く知っていれば良かったかなあ。いや、でもやりたいことはずっといっぱいあったしね。それにたまたまナイスゲームを観たからというだけかもしれないし。

それでも一野球ファンとして、この歴史ある場所で歴史あるリーグ戦を観ることができて良かったです。若いエネルギーを存分に浴びて、だからちょっとした文章を久々に紡いでみたくなったのかなと思っています。

 

文章のテンションも「だ・である・です・ます」もめちゃくちゃだけど、なんだかすっきりしました。そもそもブログは日記だしね。原点原点。

 

……関西に戻ったら、久しぶりに甲子園にも行こうかな。……夏の甲子園は暑いな。阪神戦か、春の甲子園か。エネルギーをもらいにいきましょう🔥