今、こんなエッセイを読んでいる。
とても面白いのでまた読了後に改めて触れたいところだけど、とにかく唖然として爆笑。
そして、読んでいる途中にふと思い出した話。
本当になんで思い出したのかわからないけれど、0.1%以下の確率で遭遇しそうな些細な出来事が、この作者の体験談の数々と共鳴したのかもしれない。なんて。
社会人になりたての頃。何かの研修――恐らく安全についての教育――で、4人1組のグループワークがあった。
どういう内容だったかは全く覚えていないけれど、話の流れで「過去の事故った体験」を話すことになった。
……いや、安全教育ですらなく、ただのプレゼンについての教育だったような気もしてきたけれど、まあいいか。
そこで目の前にいた男が、まずこんな体験を語った。
「俺、自転車で崖から落ちたことがあるんですよ」
いや、ちょっと待った。
まず(峠越えが趣味でもない限り)自転車で崖の上にいる状況が極めて稀だし、落ちるほどの猛スピードで下ることもなかなか無い。そして見た目に後遺症のようなものは全く見受けられない。どういうことだ。
いわく、家の近くの高台になっているところがある。そこのカーブを曲がりきれずにガードレールに衝突。そのまま自転車ごと道の外へ投げ出された。
しかし、運の良いことに、木に引っかかったりして助かったそうだ。自転車は破損したものの、やれやれ、という感じで押して上まで登ってきたらしい。
そんな壮絶な経験を笑って話せる彼の人柄と、運の強さが非常に羨ましい。そして初っ端からそんな話はやめていただきたい後のハードルが上がる。
まあ他の2人もこのレベルの話は
「ああ、自分は自転車で車に引かれたことありますね」
おいおいおい
隣で何食わぬ顔して座っていた男も、そんな経験を持っていたとは……。
その先はありふれた事故談ではあったが、自転車事故者が2人も同じ場を共有しているとはなかなか珍しい。
それとも自分が知らないだけで、日本の若者の間では今自転車事故がブームなのだろうか?なにせ日本は広い。知らなくても仕方がない。
そんなブームに乗り遅れたのが自分と斜向かいの男だ。いやーみんな凄い、と笑っていたら、斜向かいの男がおもむろに口を開いた。
「僕、昔そういえば海岸で転んでモリを手に刺したことがあります」
…………モリ?
あの魚を捕る道具の?
「いや、なんで落ちてるの」
「知らないけど、、ゴミの多い海岸だったから」
ゴミが多いのかー、じゃあ仕方ないなー、
ってならないならないならない
彼が言うには、偶然転んで偶然手をつこうとした場所に偶然モリがあって、ということらしい。
何分の一の確率を、彼はその手に引き寄せてしまったのだろう。ブラックホールなのか、その手は確率論のブラックホールなのか。
そして幸いにも、手はそれほどの期間を要さず完治したそうだ。それもまたどんな豪運だ。
こんな話を聞かされた後の自分が何を語ったのかなんて、全く覚えているはずもない。
この席に居合わせてしまった事自体が、もはや語るべきインシデントだ。
生きていると色んな経験もするし、色んな経験も聞くんだなあ、と思った一コマ。
ハインリヒの法則でいえば、全員間違いなく確実に、ピラミッドの頂点「1」に当たる出来事だ。
いや、それとも後遺症なく助かってはいるのだから一応「29」なのか?ここまで来るとインフレすぎてもう自分にはわからない。ヒヤリハットの向こう側。
そう言えば、冒頭の本に出会ったのも、偶然だったことを追記しておく。
東京・池袋「梟書茶房」
全ての本の表紙とタイトルが隠され、紹介文だけで選ぶ素敵なお店。
ぜひ、興味のある方は足を運んで、偶然と出会っていただきたい。それは非常に稀な、そして思いがけない良い出会いになるかもしれない。
……間違えても、道中でヒヤリハット的0.1%と遭遇しないよう祈っておきます。