お台場のランドマーク。
お台場という場所をご存知だろうか?
……と、知らない人を意識して書き出したけど。よく考えたら、12年前、大阪で小学生をしていた自分でも知っていたのだから、まあ今さらすぎるかと気付いた。
自分が初めて訪れたのは、12年前、家族旅行だった。
時はフジテレビの全盛期。笑う犬とか、デジモンとか、コンテンツもたくさん。テレビ局の見学がとにかく楽しかった記憶しかない。
お台場は、フィクションにもしばしば出てくる場所だ。
例えばさっき書いたデジモン。初代デジモンの後半でも、お台場が登場した記憶がある。
あと、「お台場は元々、江戸末期の異国船対策のために東京湾岸に作られた砲台。だから台場」……という豆知識があるけれど、
これも自分は、敬愛する作家・中村航さんの小説で初めて知った。
「めぐは攘夷派なんだね、頼もしいね」
「ん、どうして」
「お台場の台は、砲台の台」
(中略)
「へえー。じゃあ一緒に、黒船を倒しに行こうよ」
「そうか。二人で小舟に乗って、こっそり斬り込もう」
「私はペリーを倒す」
「わかった。おれはめぐを守るよ」
【中村航「僕の好きな人が、よく眠れますように」より】
カップルが戯れるにも良い場所。
そう、お台場は年中無休の楽しみに満ちた場所。いつでも、誰でも、お金を払わずとも楽しめる、テーマパーク。
そんなお台場は、1人で歩いたって、めっぽう楽しい。
新橋駅から、それ相応のお金はかかるけど、ぐるんぐるんと回り、海の上を走り、遠くにカラフルな建物が見えてくる。このときの心の浮き立ち方といったら。
手前が「台場」、奥が「お台場」。
テラス席の並ぶデックス東京ビーチや、色とりどりのアクアシティの建物は、まるで海外にいるかのような、あるいは遊園地にいるかのような気分にさせる。
ショッピングを楽しむのもよし、眺望を楽しむのもよし。最近訪日外国人がやたら写真を撮っている、自由の女神を見に行くのも良し。
自由の女神とレインボーブリッジ。 ある意味「本物の」自由の女神です。
少し海に降りてみよう。
防砂なのか防風なのか知らないけれど、松の木を植えて「江戸」らしさを感じさせていて、遊び心を感じる。
そして目の前に現れるビーチ。
人工の砂浜が弧を描いて広がり、たくさんの人が憩いのひとときを過ごしている。
さすがに泳ぐには厳しいけれど、近くからは遊覧船も出ているし、夏になるとビーチバレーを行っていたりして、充分エンタメ的にも楽しめる場所だ。
そして、この場所からの夕景は、ぜひ一度は生で観ていただきたい。
夕陽と、対岸の一千万都市・東京と、レインボーブリッジと、オレンジ色に揺れる水面。初めて見たときから、自分の中の東京観が少し変わってしまったくらいの絶景だ。
鳥たちだって様になる。
陸の方に入ってみよう。
ちょうど中心辺りのエリアへ。プロムナード、出会い橋、夢の大橋など、この辺りはとにかくオシャレ感や明るさを前面に押し出したネーミングが並ぶ。
……正直、やりすぎ?とも思わなくもないけど、一瞬でコンセプトが分かるという意味では思い切っていて良いのかもしれない。
ここで出色だと思ったネーミングが、商業施設「ダイバーシティ」。
中学か高校か、"Diversity"という英語を習ったとき、きっと多くの方が「"Diver City"……深海都市?」と勘違いした経験があるだろう。……え?自分だけ?じゃないですよね???
"Diversity"=多様性。人や店の多様さ。
"Diver City"=海の街というイメージ。
そして何より、ここは"台場シティ"。
トリプルミーニングとは恐れ入った。きっと作者は思いついた瞬間飛び上がって喜んだことだろう。
ダイバーシティの前では、実寸大のユニコーンガンダムが出迎えてくれる。
天気が悪ければ、ヴィーナスフォートで楽しむのもいいかもしれない。
昭和レトロを再現したエリアに外車が並ぶエリア。天井の空の絵が移り変わっていくエリア。高級店で買い物なんてせずとも、見ているだけで楽しい。後者はちょっとマカオのカジノ「ヴェネチアン」みたい。なんちゃってカジノも体験できる。
自動車展示場 MEGA WEB。レトロ感が良い。
いつの間にか空の色が移り変わって慌てて撮影したの図。ヨーロッパ風の店構えもいい感じ。
人混みに疲れたら静かなエリアへ。
船の科学館の近辺は、海沿いに遊歩道があったりして、のんびり散歩するのにちょうど良い。
この付近、なぜかモデルさんの撮影によく出くわす。人通りが少なく景色が良いからだろうか。こういう風に撮っているんだ、と初めて見たときはなかなか興味深かった。
そうだ。先日、試しに楽器の練習をしていたら、警備員のおじさんが横を通りかかったことがあって。
「ヤバい、怒られるかな?」と身構えていたら、彼はニコッと笑ってどこかへ去っていった。
いい場所だ。
船の科学館のシンボルは、元・南極観測船の「宗谷」。良い空と共に撮れてちょっと嬉しい。
他にも観覧車や、大江戸温泉物語や、土日の誰もいないテレコムセンター付近の妙なやみつき具合や(笑)、色々見どころはある。
今、脳内でマッピングしながら書いているけれど、改めて、お台場は本当にほとんど隙のないエリアだなと感じる。
そして、繰り返しになるけれど、これが基本的にタダで楽しめる。人は確かに多いけれど、エリア自体が広々とした作りになっているから、のんびり、かつ楽しみながら散歩するのにこれほど適した場所は、東京では他にそうないと思う。
土日のテレコムセンター付近のゴーストタウン感。好きな人にはたまらないかも。…はい好きです。
まるで巨大遊園地の街、お台場。
楽しいアトラクションの数々と、海を活かした景観と。道行く人々の表情は、みな楽しそうだったり、穏やかだったり。
こういう場所が大好きだ。どんな気分のときに訪れても、きっと心の安息を約束してくれるから。
海に囲まれた多様性の街へ、さあ、また潜りに行こう。