ジンジャー・エールの生姜率

勢いで始めてしまったブログ。旅行や小説や音楽を語るともっぱらの噂。

「ねえ、みぞれ」 〜映画「リズと青い鳥」を観て〜

改めて見た前回記事のタイトルのノーセンスっぷりに愕然としつつ、こんばんは。

 

昨日、ようやく観に行けました。

リズと青い鳥

liz-bluebird.com

 

(※以下、若干のネタバレを含んでおります)

 

高校時代に吹奏楽をやっていた身として。ユーフォシリーズのTV版を完走した身として。是非観に行こうと思っていたら、うっかりパリに飛んだりして時間が無くなり。

まあともかく、評判も良かったので楽しみにしておりました。

 

 

開始5秒くらいでうるうるきてました。

なんだよこの音使い反則だろ

 

特に自分も木管をやっていましたので、ああいう木管主体の音楽ってものを聴くと、無条件で引き込まれてしまいます。

そしてね、最初の学校前のシーンの、なんというか「音への配慮」でね、完全に耳が持っていかれました。

 

この映画、良かった点を考えると、本当に枚挙にいとまがない。

ストーリーの組み立てはもちろん、

徹底した色彩の対比(暖色、寒色。白色、黒色。間を埋める中間の色…)、

映し出されるシーンと流れる音との接続(学校前のシーンのリズム、とある場所でのガラス質の音…)

どこに着目しても素晴らしく、私は普段あまりアニメを観ない人間なので、アニメーションという媒体の表現力の可能性に驚嘆していました。

 

まあ、考察は既に様々な先達がなされてますし、私がする必要もないでしょう。

だからここでは小難しいことはいいんですよ。

途中からボロ泣きですよボロ泣き。

3つくらい横の席の男性が、上映中目元こすってるのが見えて、「うんうんわかるわかるよ、泣くよこれ、泣いていいんだよ」って謎に優しい気持ちになるくらい心が洗われました。

 

一番泣いたのは、やっぱりあの運命を決めたオーボエの演奏シーン。

ストーリーの流れだとか、みぞれの決意とか、希美の感情の乱れとか、そういう部分を置いてさえ、

純粋に音楽として聴いたとしても、あそこは泣けた自信があります。神オーボエ。なんだあの音色……。

実際、作中でも泣いている生徒いましたもんね。「うんうんわかるわかるよ、泣いていいんだよ」と謎に優し(以下略)

 

ああそうだ。

考察しないと言ったけれど、一つだけ思ったことについて。

 

 

楽曲の方の「リズと青い鳥」、第三楽章。

要するにみぞれと希美のソロの部分ですが。

 

主旋律が「レーミドレ」なんです。

これ、こう聞こえません?

「ねえ、みぞれ」って。

 

もちろん、偶然母音が一致しただけかもしれませんが、あれほど音に気を使っている作品です。メインテーマにそういう意味を込めていても不思議ではない。

もっとも最初の「レ」は「ねえ」じゃないかもしれませんが、

「ウェイ、みぞれ☆」みたいなリア充な音楽ではないのでたぶん合ってるでしょう。

 

ですが、そこで引っ掛かるのが「オーボエからスタートする」ということなんです。

オーボエ奏者のみぞれに対する呼び掛けならフルートから始める方が自然なのでは?…と。

昨日はここまでぼんやり考えて終わっていましたが、さっきハッとしました。

 

 

みぞれが、

「自分の中に閉じ込めている自分に呼び掛ける『ねえ、みぞれ』なのでは?」

 

 

本作は、「リズと青い鳥」をきっかけに、みぞれが変わる物語です。

無口で、感情をあまり見せなくて、希美のために生きていたみぞれ。

「リズ」のソロでも、希美のために、希美のフルートを引き立てるために、オーボエを吹いていたみぞれ。

それが、あの合奏シーンで変わるんです。

自分の思いを希美にぶつけるため、「ねえ、みぞれ」と歌うんです。

 

そう、これはみぞれが主役の物語。

だからあの曲でも、フルートは後追いなんです。オーボエのコール、フルートのレスポンス。

フルート奏者の希美は、作品の最後で、「追いつけるように頑張るから、待ってて」という旨のことを言いました。

いつも他人に対しはぐらかしがちな自分。みぞれに対して歪んだ優越感に浸っていた自分。みぞれの音楽センスに追いつけない自分。

でも、悩み、苦しみ抜いた末に、彼女はちゃんと選んだんです。

「ねえ、みぞれ。本気の自分の声で、語りかけるよ。みぞれの音楽に、語りかけるよ」と。

 

 

……と、妄想もほどほどにして。

(やめないとそろそろ目頭が熱くなってきたからとは言えない)

いやー、良い作品でした。

思えば昨年の春も、「ラ・ラ・ランド」を映画館で観てボロボロのボロ雑巾になるまで泣いた記憶がありますが、この季節の音楽映画は人を泣かせる魔力でも持っているのでしょうか

 

さて、映画館で気付いたことはもっと色々ありますし、他人の考察で気付かされたこともいっぱいあります。

ただ、結局最後に気持ちとして残るのは、あの2人が幸せになってほしいな、ということだけ。

みぞれはもうきっと、幸せの見つけ方を身につけられたと思います。

希美は……いや、大丈夫か。

だって、最後のシーンで。対等な距離間で、対等な目線で会話できるようになった二人を見ましたもんね。

(って今思ったけれど、最後のシーンも、希美の方が背が高いけど坂の下にいるんですよね……嗚呼)

 

変に歪んだ関係じゃなくて、これからはずっと、同じ目線で、心から笑い合える二人でいてほしいな。

「ハッピー・アイスクリーム」

物語は、ハッピーエンドがいい、ですもんね。