ジンジャー・エールの生姜率

勢いで始めてしまったブログ。旅行や小説や音楽を語るともっぱらの噂。

季節と共に生きる街

食堂のテレビから、和笛の音が聞こえた。

ぼうっと横目で映像を見て、一瞬で切り替わったけれど、どこかの祭礼だろうなと理解した。

 

5月、祭り。

ああ、もしかして葵祭だろうか。

 

……とっくに終わってるじゃねえか……と1分後に気付いたけれど。

 

 

学生時代、京都という街に住んでいました。

日本史が好きな私は、すぐに寺社参りにもはまり、また色んな祭りにも参加して。

中でも、祇園祭のバイトは、一生ものの思い出。

 

京都から離れて、数年。

就職で関東へ来てからは、すっかり京都とは疎遠に。

今だから、思うんです。

京都は、季節の中にある街なんだな、って。

 

 

今回は、せっかくなのでお祭りの話を中心に。

著名なお祭りは日本全国種々多様にあります。青森のねぶた祭り。徳島の阿波おどり。福岡の天神祭

だけど、京都には全国区で有名な祭りが3つもあります。

春の葵祭。夏の祇園祭。秋の時代祭

これほどの知名度の、それも街のかなりの範囲が対象となる祭りが、季節ごとに。かなり特異な例ではないでしょうか。

京都市内で暮らしていたら、交通規制の看板やテレビのニュースを見て「ああ、○祭りの時期か」と必ず意識させられます。

 

それ以外にも。

2月、吉田神社の節分祭。

7月、下鴨神社の御手洗祭。

8月、五山の送り火(祭……?)。

 

街のあちこちで、季節ごとに大きな祭りが行われています。毎年、変わることなく。

 

 

京都は、いつも季節の中にある。

 

初詣の混雑に圧倒され、凍結した道を自転車で行き、梅の香りに誘われ。

鴨川の桜を横目に歩き、葵祭の行列を眺め、路傍のあじさいに心が揺れて。

祭の喧騒に飲みこまれ、川床で風情を感じ、キンモクセイの花が香って。

色づき始めた銀杏を見上げ、紅葉の道を踏みしめ、白い大文字を見つめる。

 

京都では、歴史の中で人が季節とどう共存してきたか、強く意識させられます。

好むと、好まざるとに関わらず。

 

 

それは、この便利な現代社会ではデメリットにもなりえます。

盆地の気候では、夏の暑さも、冬の寒さも、容赦がない。

春や秋には花粉も飛ぶし、街が近いのに虫も割と見る。

自分も、今あの気候の中に戻って、何年も暮らせるかというと、少し自信がありません。

 

 

でも。

 

高層ビルに視界が埋め尽くされること。

工場の大型装置に囲まれること。

モニターの中と対話し続けること。

 

現実の季節の流れと、五感をくすぐる季節の流れ。

それらが解離してしまう方が、不幸せなことなのかもしれない。

嫌が応でも、季節のメカニズムを思い出すことの価値は、実は凄く大きいのかもしれません。思うよりも、ずっと。

 

 

もう、葵祭を忘れないように。季節の現在地に鈍感にならないように。

うん、時間ができたら、久しぶりに京都に行こうかな。

歩いて、歩いて、歩き回って。古都に吹く風と、草花の色と、寺社の空気を感じるうちに、自分を、この世界の季節の流れの一部に戻してみよう。

 

 

季節の中で、深呼吸。

 

 

 

Lampの新譜:「彼女の時計」…正当進化の名盤

先日の「リズと青い鳥」記事を上げた後、急激な勢いでPVが上がって「おおお」ってなった小市民系アカウントですどうも。

まあそれでも累積で3桁台ですが……流行りのコンテンツの力って凄いなあとまざまざと感じました。

同じように考察したい人がいっぱいいるんだな、そういう意味でも嬉しいですね。

 

 

今回は最近買ったCDの話です。

 

Lamp 「彼女の時計」

http://www.lampweb.jp/8th/

 

(未聴の方はYoutube配信曲(MV)もいくつかあるので、ぜひそちらを。一曲だけ抜粋)

「1998」

https://youtu.be/bl9Cb063TmI

 

 

前回のCDから4年ぶりなんですね……

私がファンになったのが3年ほど前だったので、初めてリアルタイムで新譜に触れられたことになります。

 

事前にネットのあちこちで「今回は名盤だぞ」という話を仕入れていて、いや毎回名盤ですやん、と内心ツッコミを入れつつ。

はい、間違いなく名盤です。

 

 

前作の「ゆめ」もかなり緩やかなバラード色強めではありましたが、「A都市の秋」というパンチ力あるナンバーもありました。

しかし今回はとにかく穏やか&美メロ路線。

アップテンポと言えそうなのが8曲中「誰も知らない」くらいですね。ここまで統一したアルバムというのも珍しい。

 

これ、ともすれば「同じような曲ばっかり」「気付いたら寝ていた」というリスクもあるんですが。恐らくリスナーを信頼してくれています。

ちゃんと聴きさえすれば、どれも異なる工夫がこらされていると気付くのは容易でしょう。

 

「夜会にて」。

まさかポップスで「ティンパニが素晴らしい」ということになるとは思いもしなかった。

曲の流れそのものはあのティンパニのおかげで曲全体に広がりが出るというか。シンフォニックな薫り付けがされるんですよね。

 

「ラブレター」は3拍子。

こちらはかなりミナス系の雰囲気ですね(詳しくないからイメージ)。いいリズム感。

 

「1998」いいですね!!

どこか懐かしい感じ。なぜかOriginal Loveとか思い出しました。違う気がする。

なんというか、90年代トレンディドラマの主題歌と言われても何も疑わない。歌詞も「レイディオ」とかですし。

シティーポップの真骨頂。しかし2番Aメロや大サビの前繋ぎなど、随所にLampらしさが光っています。

 

「スローモーション」は唯一のフラット系の音楽。個人的な感情としてはこれが一番好き。

まるでクラシックのロマン派の音楽みたいなコードだな、と思いました。すいません雰囲気で言ってます適当です。

カチカチ言っている、時計を模した音?もスローモーションの空間を作り出していて、いいなあ。

 

「夢の国」はマイナー調。

限定販売されていたLPレコード版だと、ここからB面。前半とかっちり切り替えていますね。

実はやや苦手な種類の曲調ではあるのですが、この曲はクセになる。

サビのメロディーラインの「GF♯G」のような半音の動きがニクい。素晴らしいですね。

 

「車窓」

イントロから驚かされた曲。まるで童話のようなシンセの音使い。全体も子守唄のような音ですね。

6拍子ですが、随所に2拍子系の分け方があるのが好き(変拍子好き)

 

「誰も知らない」

このアルバム唯一のアップテンポ。かつ、かなりトリッキーな曲です。

イントロはまたCメジャーかAマイナーかな?と思ったら、Aメジャーに移調。

そしてこの曲、特にBメロの展開が素晴らしい。拍子を崩す、コードも変える。その後のサビもLampのメロディーライン。

 

「Fantasy」

このアルバムで一番シンプルな音楽です。でもこの一曲だけで充分闘えるんだよなあ(何と)

しかしこのB面、Am,CとAm,Cと見せかけてA,A,と見事に近い調だけで構成されているんですよね。5回くらい通してようやく気付いた。

最後にさざ波の音を流して、余韻たっぷりに締めくくります。

 

 

どれが最高とは言えないくらい完成度が高い。

もちろん今までのオシャレで儚げな世界観をベースにしつつ、年齢とキャリアの積み重ねが、ますます深みを出していて、洗練された傑作です。

初めて聴いた後、正当進化、という言葉が真っ先に出てきました。

 

初めてアルバム丸々紹介とかやりましたが、ああ、語彙が足りない……。特にシンセサウンドのことやミナス系のことなど、バックグラウンドの知識不足を感じます。

あと歌詞のこともまだあまり追えていないですしね。まあ前の辻林さんの曲みたいな勢いでやってたら一週間かかりそうですが。

(参考)http://yawing-hanon98.hatenablog.com/entry/2018/05/03/171341

 

また何か気付いたら更新すると思います。

とりあえず、ライブの特典引換券が同封していたので(タワレコで買ったから新宿インストアライブの券も!)、なんとか予定空けたいなあ、という所存です。

 

(180605追記!)

そういえば、以前にLampの曲を元にして書いた小説がありましたので、宣伝!

すぐにこういう宣伝思いつかないのがアカンとこ!(笑)

estar.jp

 

「ねえ、みぞれ」 〜映画「リズと青い鳥」を観て〜

改めて見た前回記事のタイトルのノーセンスっぷりに愕然としつつ、こんばんは。

 

昨日、ようやく観に行けました。

リズと青い鳥

liz-bluebird.com

 

(※以下、若干のネタバレを含んでおります)

 

高校時代に吹奏楽をやっていた身として。ユーフォシリーズのTV版を完走した身として。是非観に行こうと思っていたら、うっかりパリに飛んだりして時間が無くなり。

まあともかく、評判も良かったので楽しみにしておりました。

 

 

開始5秒くらいでうるうるきてました。

なんだよこの音使い反則だろ

 

特に自分も木管をやっていましたので、ああいう木管主体の音楽ってものを聴くと、無条件で引き込まれてしまいます。

そしてね、最初の学校前のシーンの、なんというか「音への配慮」でね、完全に耳が持っていかれました。

 

この映画、良かった点を考えると、本当に枚挙にいとまがない。

ストーリーの組み立てはもちろん、

徹底した色彩の対比(暖色、寒色。白色、黒色。間を埋める中間の色…)、

映し出されるシーンと流れる音との接続(学校前のシーンのリズム、とある場所でのガラス質の音…)

どこに着目しても素晴らしく、私は普段あまりアニメを観ない人間なので、アニメーションという媒体の表現力の可能性に驚嘆していました。

 

まあ、考察は既に様々な先達がなされてますし、私がする必要もないでしょう。

だからここでは小難しいことはいいんですよ。

途中からボロ泣きですよボロ泣き。

3つくらい横の席の男性が、上映中目元こすってるのが見えて、「うんうんわかるわかるよ、泣くよこれ、泣いていいんだよ」って謎に優しい気持ちになるくらい心が洗われました。

 

一番泣いたのは、やっぱりあの運命を決めたオーボエの演奏シーン。

ストーリーの流れだとか、みぞれの決意とか、希美の感情の乱れとか、そういう部分を置いてさえ、

純粋に音楽として聴いたとしても、あそこは泣けた自信があります。神オーボエ。なんだあの音色……。

実際、作中でも泣いている生徒いましたもんね。「うんうんわかるわかるよ、泣いていいんだよ」と謎に優し(以下略)

 

ああそうだ。

考察しないと言ったけれど、一つだけ思ったことについて。

 

 

楽曲の方の「リズと青い鳥」、第三楽章。

要するにみぞれと希美のソロの部分ですが。

 

主旋律が「レーミドレ」なんです。

これ、こう聞こえません?

「ねえ、みぞれ」って。

 

もちろん、偶然母音が一致しただけかもしれませんが、あれほど音に気を使っている作品です。メインテーマにそういう意味を込めていても不思議ではない。

もっとも最初の「レ」は「ねえ」じゃないかもしれませんが、

「ウェイ、みぞれ☆」みたいなリア充な音楽ではないのでたぶん合ってるでしょう。

 

ですが、そこで引っ掛かるのが「オーボエからスタートする」ということなんです。

オーボエ奏者のみぞれに対する呼び掛けならフルートから始める方が自然なのでは?…と。

昨日はここまでぼんやり考えて終わっていましたが、さっきハッとしました。

 

 

みぞれが、

「自分の中に閉じ込めている自分に呼び掛ける『ねえ、みぞれ』なのでは?」

 

 

本作は、「リズと青い鳥」をきっかけに、みぞれが変わる物語です。

無口で、感情をあまり見せなくて、希美のために生きていたみぞれ。

「リズ」のソロでも、希美のために、希美のフルートを引き立てるために、オーボエを吹いていたみぞれ。

それが、あの合奏シーンで変わるんです。

自分の思いを希美にぶつけるため、「ねえ、みぞれ」と歌うんです。

 

そう、これはみぞれが主役の物語。

だからあの曲でも、フルートは後追いなんです。オーボエのコール、フルートのレスポンス。

フルート奏者の希美は、作品の最後で、「追いつけるように頑張るから、待ってて」という旨のことを言いました。

いつも他人に対しはぐらかしがちな自分。みぞれに対して歪んだ優越感に浸っていた自分。みぞれの音楽センスに追いつけない自分。

でも、悩み、苦しみ抜いた末に、彼女はちゃんと選んだんです。

「ねえ、みぞれ。本気の自分の声で、語りかけるよ。みぞれの音楽に、語りかけるよ」と。

 

 

……と、妄想もほどほどにして。

(やめないとそろそろ目頭が熱くなってきたからとは言えない)

いやー、良い作品でした。

思えば昨年の春も、「ラ・ラ・ランド」を映画館で観てボロボロのボロ雑巾になるまで泣いた記憶がありますが、この季節の音楽映画は人を泣かせる魔力でも持っているのでしょうか

 

さて、映画館で気付いたことはもっと色々ありますし、他人の考察で気付かされたこともいっぱいあります。

ただ、結局最後に気持ちとして残るのは、あの2人が幸せになってほしいな、ということだけ。

みぞれはもうきっと、幸せの見つけ方を身につけられたと思います。

希美は……いや、大丈夫か。

だって、最後のシーンで。対等な距離間で、対等な目線で会話できるようになった二人を見ましたもんね。

(って今思ったけれど、最後のシーンも、希美の方が背が高いけど坂の下にいるんですよね……嗚呼)

 

変に歪んだ関係じゃなくて、これからはずっと、同じ目線で、心から笑い合える二人でいてほしいな。

「ハッピー・アイスクリーム」

物語は、ハッピーエンドがいい、ですもんね。

小説、大放出祭!(お待たせしました(してない

ブログを更新した後は、数日間ちらちらアクセス解析を見るのですが、最近ちょこちょこ人が増えてきていて嬉しい限り。

というわけで、ここらで一回、ネットにアップしている小説の話でもします。

 

というか、ブログの冒頭に「小説を語る」と言ってる割に一回も小説の記事上げてないですし。

エッセイとか、本全般の話だけはあったけれど…看板の偽りっぷり

 

小説自体は学生時代から書いていて、友人に見せたりして楽しんでいました。

あとは投稿も何度か。もちろん夢はでっかく芥川・直木ですよ。

まあ、当然のごとくまっっっったく橋にも棒にもかからないんですけど。

(と言いつつ一回だけ一次は通ったことありますが…落選したのだから同じ)

 

就職してからはどうしても忙しさにかまけてペースダウン。それに見せる相手が全然いなくなったのも大きいですね、書き甲斐の低下。みんな忙しいのは同じ。

そこでふと心境の変化があり、ネット上に投稿してみようかな、と思っていくつかリサーチ。

小説家になろうラノベ系が多いイメージ。異世界とか

カクヨム異世界とSFのイメージ。ネット文化を引き継いだ感が強い

・エブリスタ:やや女性向け。人と人とのあれこれな話が多いイメージ。

 

自分の小説は割とヒューマンドラマよりの傾向があるので、エブリスタかな、と。

ちょうどエブリスタで目ぼしいコンテストがあったのもきっかけでしたかね。

(カクヨムの雰囲気も楽しいので、いつか似合う作品が書ければ掲載しようかな…とか思ったりしてます)

 

エブリスタは、コミュニティとかファンとか、交流が盛んなサイトではありますが、基本的には細々と執筆、出したいコンテストがあれば投稿、という感じで進めています。

あんまり精力的になりすぎるとしんどいですしね。継続が大事

 

長々と書きましたが、いくつか作品紹介をさせていただきます!

 

檸檬二個分と」

estar.jp

 

不倫の話です。

 

 

(はいこの時点で3割くらい読者減ったー)

 

 

不倫とはいっても、大学生の話ということもあり、結構鮮やかに――京都の春を描き込みながら――仕立てた作品です。

色々な意味で難しい作品でしたが、この作品を書いたおかげで、人の交わりを描くことや、情景を描くということについて、何か大事なものをつかめた気がします。

あと自分に不倫経験は全く無いです(名誉のため)。 

 

実はこの作品、2回文学賞に落ちているかわいそうな作品です。

2回目は結構ちゃんと書き直したんですが、無関係だった模様。

だから、読もう。

花蓮と一緒に、泣こう。

そして落選しまくった作者と一緒に、泣こう(

 

 

「おかえり。」

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幼馴染と夏の空。

2018/05/11現在、一番読まれている作品みたいです。たったの2桁か…ザコめ…

だけどこの作品、実質たった5時間で書いたんですよ。これくらいの長さの作品では最短記録。労力と評価は比例しないとはまさにこのこと。

 

南海電車コンテスト」みたいなコンテスト用の作品でしたが、あえなく落選。

そりゃ5時間で書いた話なんか通してたまるか

ただ友人の受けは割と良かったので、読み物としてはちゃんと書けたのかな?

もちろん反省点はいくつもありますが、これはこれで一つの作品かと。

 

 

こういう幼馴染ものが昔から結構好きで、

近年「幼馴染は負けフラグ」とか言われていて非常に世知辛い…poison…ですが、

どれくらい好きかというと、人生で初めて書いたのが「幼馴染の男女とクリスマスの話」なくらい好きです(伝わりにくい)

いわば得意分野?に、「離れていた地元に戻る」という実体験から膨らませやすいテーマを含めたから、スムーズに書けたのかな、と。

郊外の夏の空を思い浮かべながら、ぜひ読んでみてください。今は5月ですけど。

 

 

「こたつ包囲網」

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コメディです。

 

というより、不条理劇です。

 

というより、ショートコントです(どれ)

 

 

どうやって思いついたのか未だにイマイチ思い出せない作品。

ただ、どうも時々自分はこういう小爆発みたいなアホ作品を書いてしまうようです。2年に1回くらい。

「そう、誰よりも俺が望むそのこたつは、今まさに包囲されている――」

じゃねえよ、どうしてこうなった

 

ちなみに最初は「こたつ大戦争」というタイトルを予定していましたが、いくら待っても戦争が起こらなかったので変えました。

いっそこたつを巡る銃撃戦とかを描いた方が面白かったかもしれない(?)

 

まあ、そんな作品です。

紹介したけど、読んでも得るものは何もないよ!

 

 

「三分間の魔法を、あなたへ。」

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どう考えても「こたつ」の後に続ける作品ではないのですが、

実は現在進行形で更新中の作品です。長編です。

というか今回の記事、単にこれが宣伝したかった。

(もちろん他の作品も読んでほしいですよ、せっかくですし…!)

長編とは言っても、連作短編の形をとっているので、案外さくさく読めるかと思います。

 

内容は、「三分間だけ使える力」と、四人の高校生の話。

それぞれに悩みや葛藤を抱える四人。春夏秋冬、巡りゆく季節の中で、彼ら彼女らが何かのきっかけを得る作品です。

 

実は、数年前に最後まで書ききった作品ではあるのですが、今回投稿するにあたって、加筆修正を加えております。

何かに悩んでいる人、何かが原因で立ち止まっている人。そんな誰かに届いてくれれば…と思いながら、週に1,2回ほど更新しております。

もちろん、クスッとくるようなネタも存分に含んでおります(特に「秋」)

 

というわけで、せっかくなので読んでみてください。

お時間がなければ、第一話の「春」だけ読んでも、楽しめると思いますので。

 

 

 

 

珍しく宣伝的なことをしましたが、私には一銭も入りません。かなしいなあ

まあこれがきっかけで有名になって出版されればあるいは…!あっはははは……。

 

 

まあ、せっかく書いたのだから読んでもらいたいなーという気持ちです。

ぜひ気になる作品があれば読んでみてくださいねー。

他にもいくつか投稿していますので、気になったらそちらもぜひ。

 

 

 

辻林美穂さんの「紡いでゆくこと」が完璧な曲という話

(2018/12/07 追記・修正)

 

5月、GW真っ盛り。

結婚式の季節でもありますね。親戚友人会社の同僚、結婚式にお呼ばれされた方も多いのでは。

移動に時間がかかり、出費がかさみ、体も懐もつらいかもしれないけれど…。

そんなおめでたいイベントに際して、オススメの一曲を。

 

 

辻林美穂「紡いでゆくこと」

https://m.soundcloud.com/tsvaci/81qe2jz3xhf8 

 

 

前にも紹介した曲ではあるけれど、あれからさらに聴き込んだ上で雑記をば。

 

この曲を聴く度に、「完璧だ…」という感想がこぼれてしまう。

3分未満のポップスだが、この短い尺にして、本当に私の考える良作の条件が詰まっている。

主に2つに分けて解説。

 

[1]歌詞について

 

ざっくり言えば「唯一無二の親友が人生の転機を迎えるときの心境」となる。

同様の主題の作品はたぶんそれなりにあって、パッと思い付いたのは木村カエラの「Butterfly」。あれも名曲。

ではこの曲の歌詞の特徴は?と言えば、そのストーリー性。

3分未満でありながら、一切の過不足なしにストーリーを紡いだその手腕が本当に凄い。しかも数々の工夫が隠されていてそれも凄い。尊い

 

という訳で。

 

解 析 し て み た。

 

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時系列の対比が凄い。

適度な韻の踏み方が上手い。

自分目線と相手目線の切り替えが鮮やか。

そして内容が尊い

 

いやもうね、Bメロとか本当に凄い。

たった4小節、歌詞としては3小節分。

このたった数文字で、この曲の全てを語っている。

試しに他の部分を取っ払って、この部分の歌詞だけを読んでも、「ああ、学生時代の友人が結婚する話」と通じてしまう。

しかも、2番なんかAメロの意味深な歌詞の答え合わせになる。ああ!とリスナーに思わせた瞬間にはもうサビが始まる。この躍動感。尊い

 

 

……そこ、ガチすぎるからってドン引きしない!!

 

 

[2]コードについて

 

この人の曲は少し捻ったコードが特徴でもあるが、本楽曲でもそれは健在。

基本的にはE♭メジャーということになるが、随所に遊び心が見られる。

 

 

という訳で。

 

解 析 し(略

 
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 ※耳コピ力は無いので割とミスしてるかも

 ※あと7thとかの情報は割と抜けている

 

この曲に頻繁に出てくるのはFGAbBbという流れ。イントロの終わりやサビの終わりなど、徐々にエネルギーを増していくために2度ずつの上昇というのは良い手法。

しかし、イントロの最初だけはBbでなくB。ここからストーリーが始まりますよ~という感じ?で面白い。

 

Aメロはオーソドックスな進み方だが(最初の区切りが実は6小節なのは面白い)、2巡目の最初は1巡目と一小節分ズレている。そのズレからBメロの部分転調まで移行していく。

5度が続く結構ダイナミックな転調だが、メロディと歌詞の甘いフレーズのおかげで、一種ドリーミングな世界が作られている。

 

そしてBメロ!!!

Gb(F#)!!!

ここまで一小節単位で変わってきたコードが、ここだけ2小節間共通。

そもそもが浮遊感を出しやすい調(※個人の意見)だが、2小節続くおかげでさらに夢見心地に。

と思っていたら、Fmに半音下降してじんわりと現実へ、そしてBbへの5度移行で現実に戻る。勢いをつける。

そしてこの辺りの歌詞が、さっきの[1]で熱弁した部分。

Aメロとサビとの楔でありながら、最も心情的であり、一番大切な回想であり、ストーリーの核である。

それを歌詞・コード(・ギターなどの音色)で完璧に構築している。

だから、この曲は凄い。

 

…サビを語る前に力を出し尽くした感があるが。

このサビはいわゆる「王道進行(4536)」を使いたくてたまらなくなるフレーズだが、巧みにそこから外している。

しかも1回目と2回目で変えていくというこだわり。なるほどそういう技があるのか…!と参考になった。

そして、最後はエネルギーを増していくFG AbBbから、Aメロ以来のEbの終始へと着地する。

 

 

どうだっただろうか。

間違い・思い違いはあるだろうが、この曲の魅力を語り尽くせたはずだ。

何せ、これを書いているだけで全身のエネルギーを使い尽くした感がある。息切れしている。絶対、人生におけるエネルギーの使い方を再検討すべきだと思う。

 

 

時間をかけて紡がれていったストーリー。

これからも紡がれていくストーリー。

こんな素敵な曲を、もっと多くの方に聴いていただきたくて。

この曲と同じような優しい気持ちを持って、大事な人の記念日を祝福できたら、その人自身も最高に幸せだろうな、と思うから。

 

 

明日の知人の披露宴を楽しみにしている、新幹線の車窓から。

カオスな街で、1人のワルツを

という訳で、旅行から無事帰還しました。

 

 

前回、かなり勿体ぶって書いていましたが、行き先はパリ(と周辺)でした。

初ヨーロッパ。しかも1人。結構な緊張感は持っていました。

 

なぜなら、有名な通りパリは治安が良くない。

切符購入中に鞄が持っていかれていたとか、

タクシーに乗っていたら窓が石で割られて強盗されるとか、

凱旋門の上に追い剥ぎがいて、盗人の行方は誰も知らないエンドを迎えるとか。

そんな芥川的世界観が広がっている世紀末な街です(ウソです)(最後は)

 

 

でも事故も怪我も被害も目立ったトラブルもなく、無事に帰ってこられたのは良かったです。

というか、治安が悪いというか…いや良くない雰囲気はしょっちゅう感じましたが、なんでしょう。

カオスな街だな、と。

 

例えば。

シャルル=ド=ゴール空港からパリ北駅(パリの入り口となる駅)まで、線路沿いの壁の9割以上、壁という壁がラクガキされていました。これは本当に誇張ではなく。

ただ、最初は「ヒエッ」となっていましたが、段々もはやそういうアートに見えてくるくらい。

というか鉄道会社や国が消していないのは、消してもまた復活するからというのもあるでしょうが、一種「そういうものだよね〜」という認識があるのでは。

 

他にも、駅のホームで不良の兄ちゃんたちが音楽流してサックスを吹き出したり(改札の外とかじゃなくて、本当にホームで)。

大学の壁に、悪ガキたちが何か投げつけようとしていたり(前を通過すると「バイバーイ」と手を振ってくれた、根はいい子たち)。

良くも悪くも、と言えばあれてすが。この多様性こそが街の魅力の源泉なのでは、と感じました。

 

 

エッフェル塔凱旋門

ゴシック建築の教会、街角のカフェ、セーヌ川に架かる橋。

ルイ・ヴィトンルーブル美術館シャンゼリゼ通り。

そんなキラキラ・オシャレな雰囲気があると思えば、そこに様々なヤンチャやボッタクリやハチャメチャが同居している。

 

どうしてもパリ=前者のイメージばかりが先行するのですが、後者があるからこそ、この街は生き続ける。

そもそも、19〜20世紀の印象派の勃興だって、貧しい芸術家たちの集まるカフェが重要だった訳で。

人々がそうした貧しい所にある文化に対し、時には白い目を向けるのかもしれないですが、個性と自由を尊重してきたからこそ、芸術の街は芸術的であり続ける。

芸術と個々の権利を理解する大人の街でありながら、若い力を遮らない。

それが、パリなのかな、と思いました。

そうそうこれこそが憧れていた街なんだよ、と。

 

 

滞在中は、割と天気が悪く、何度も雨に降られました。

だけど、傘の下から見る濡れた街の姿も、また美しい。

特に夜〜夜明けの、石造りの建物の照明と、車のライトとが織り成す美しさと言えば。

 

「こんな街で、傘を差して踊ってみたい」

いつか、思春期の頃、ひそかに憧れていたことをふと思い出しました。

 

イヤホンから、オシャレなジャズワルツを。

試しに少し、傘をくるりと。

控えめだけれど、ステップを踏んだり、ジャンプして回ったり。

誰かに見られたら変人に思われるかな、と考えつつ。

だけどこの街なら、こんな行為も溶け込めそうだと思って。

ノートルダム大聖堂の立派なファサードが、ルーブル美術館の豪華なモニュメントが、笑いながら見逃してくれる、そんな気がして。

 

 

夜明けが近付きつつある街で。

照明が消えつつある中で。

また、今日もカオスな街が始まるんだな。

ワクワクが止まらなかった、そんなパリの朝。

 

 

また、行きたいな。

 

春は就活(とかいうあれ的あれ)

どうも。

めっきり春になりました。

採用の季節です。

 

 

……待って、逃げないで。

 

ええ、そろそろ企業の採用活動が本格化している時期ですね。

懐かしいな。私も数年前は「新卒理系国立大学院生」という「完全無欠・最強無敵」のカードを高笑いしながら切り、

 

惨敗いたしました。

 

ええ、ものの見事に。

たまに「どれくらい会社受けました〜?」なんて話をされると、本当に答えられなくて困ります。

就活末期に作っていた「落ちた会社+書類出すか検討中リスト」が100の大台乗っていたのは覚えている

……検討中で終わった企業の方がはるかに多かったです、一応ね。

 

 

一番の失敗理由は「やりたいことが絞りきれなかった」こと。

といっても別に「将来やりたいことなんかないし〜金は欲しいから就活するけど適当にお気楽に生きたいだけやしぷ~〜」って訳ではないです名誉のために。

むしろ、面白そうなことが多すぎて、絞りきれなかったんですよね。

 

機械メーカー!どどーん!わあカッコいい!

材料メーカー!ばばーん!わあ知的!

先端のIT企業!ででーん!わあ刺激的!

環境コンサル!ずずーん!わあ素敵!

 

……万事これに近い調子で。

今から思えばアホなんですけど、これ仕方ない部分もあると思うんですよね。

 

例えば、車の購入を検討しているとき、

例えば、家の購入や新しい賃貸物件を検討しているとき、

色んな条件を並べてワクワクしますよね。デザイン、機能、オプション、……。

 

就活もそれと一緒なんですよ。

所詮、就活生は消費者なんです。

 

と、暴論をぶち上げましたが(※暴論という自覚はあります)。

だって、ですよ。企業を選ぶ際、学生が判断軸にするのは、採用サイト、説明会のスライド、実際の社員の声、職場見学、辺りが主になると思います。

前者2つですが、特にある程度以上の企業になると、サイトとかスライドは外注先のプロが作ったりしていますので、そりゃ魅力的ですよ。相手は消費意欲を最大化させる方法を知っているプロですから。

後者2つは、生の姿になるので作りようはないですけどね(実際、「この会社照明が暗いな…」というので優先度が落ちた企業もあります)。それでも、大抵は魅力を最大限伝えられるよう考え抜かれた上で人選や見学コースを検討している訳です。そう、生の姿に見えたって、結局は企業のお客様向けの姿なのです。

 

その結果、学生時代の私は、消費者として企業の手のひらでくるくるころころさせられていた訳です。あわれな子羊よ。

そして最悪なことに、上っ面だけで来たので、一次面接なんかは良くても最終面接辺りになると(……コイツ、本当にウチに来る意欲あるの?)と思われてしまうのです。

……まあ、逆にそこできちんと落としてもらえて良かったのかもしれませんけどね。ミスマッチが企業にも学生にも一番不幸せなことですし。

 

 

もちろん、いくつか「本当に行きたい企業」はありましたが。そういう所は得てして倍率が高く、普通に落とされました。

結局、どうすれば良かったんでしょうかね。

そうか、消費者になるな、むしろ生産してやれ。くらいの気持ちとかどうでしょう。

 

 

??(←自分で書いててよくわからなくなった図)

 

 

 

いや、起業しようぜ!って訳ではなく。

例えば面接なんかで、「こういうスキルを身に着けたいが制度/仕組みはあるか」「こういう試してみたいことが実現できるか」「御社の今後のプランに自分のこの能力は活用できるか」と、相手の興味を引くようなカードをこちらからバンバン切るのです。準備は事前にしておいて、面接では淀みなく。相手の出方には常時気を配りながら。

そうは言っても、いくつも企業を受けているし〜なかなか考える時間が取れないよ〜となるかもしれませんが、

少し考えてもそのアイデアが一切出てこない企業はまず通らないです。

※個人の見解です。

※意見には個人差があります。

※真面目に言うと、業界業種企業の風土にもよります。

 

企業だって、新卒に対して基本的には将来の戦力を求めているんです。会社を中長期的に支えてくれそうなプランや能力を持つ人材を優先するのは当然です。

ただですよ。上っ面の情報を一夜漬けみたいにインプットするんじゃなくて、そういう生産的な考えを意識するようにすれば、もう勝ったようなものです。だって企業研究も業界研究もその中に既に含まれていますから。

 

とはいっても、アイデアが出ないのは落胆すべきことではなく、単にその企業とのマッチングが取れなかっただけです。そこで自分がやりたいことはちょっと無かったっぽいかな、というだけ。

むしろESや面接で無駄に浪費する前に優先順位付けができて、ラッキーですらあります。

……あまりにどの会社に対しても出てこない場合は、まずなぜ就活をするのかからゆっくり考え直した方がいいです。ちょっとそこ、数年前の自分。

 

 

世の中には、本当に色々な企業があります。

同じ業界でも、休憩中の社員の表情や社屋のボロさや、色々。

これは(哀れにも)就活で落ちまくった自分が言うから、(無駄に)説得力があります。

だから、どこかにはかなりの精度で合う企業はあるはずです。

あとは、その企業にマッチングを取れるように、仕込みをしておくだけ。内定はその一つだけでもいいんです、どうせ入社するのは一社だけなんですから。

 

まあ、なんとかなりますよ、案外。

例えば(面接怖いよがくぶる)って当初は思っていた自分も、最後の方には社員の目をガン見で話せるようになりましたし。

事前の仕込みとか、面接のコツとか、多少経験値を得ればなんとなくカバーできます。

 

 

そうそう。就職してから今まで何度か、就活生と話す機会がありました。私はよく、「体調には気をつけてくださいね」と言います。それはこういう無茶苦茶な経緯があったからで。

生産活動なんて、健康なときじゃないと満足にできません。一旦自分を見失うと、作るべきものすら、作りたいものすらわからなくなるので。

人は誰でも、不健康な精神状態だと、消費する一方の生活になりがちです。。

 

 

最後に。

就活中、遠征先の漫喫でハッとした上でボロ泣きした上で作者ありがとぉぉーってなった部分を引用して、(この無様なブログを)綺麗に締めくくりたいと思います。

 

 

「”君らしく”なんて曖昧なものじゃない。何やったって変わったってカンケーない。君はどうせ君だよ」

「君の人生で ありったけの君で 真摯に弾けばいいんだよ」

(講談社四月は君の嘘」3巻より)

 

 

どうか全ての就活生が、来年、素敵な四月を迎えられますように。